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2019年度センター英語(筆記)の解答・解説・和訳
第4問A
芸術は人々がどう生きたかを映し出すものなのかもしれない。研究者らは、芸術がどのようにして衣服と社会的背景を描き出すかを議論してきた。家庭料理を特徴とした絵画にまでこの考えが拡大しうるかどうかを決定づけるため、一つの研究が行われた。この研究の結果は、ある特定の種類の食物がなぜ描かれたのかを説明する手掛かりになるかもしれない。
研究者らは、1500年から2000年までに描かれた140の家庭料理の絵画を調査した。これらの絵画は、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダの5ヵ国のものであった。研究者らはこれらの絵画を調査し、91種の食物の有無について、無しなら0の記号を付し、有りなら1の記号を付した。たとえば、1つの絵の中に1個あるいは複数個のタマネギが出てきたならば、研究者らはそれを1という記号で表したのである。そして、それぞれの食物を含む各国の絵画の割合を計算した。
図1は、抜粋した食物についての各国の絵画の割合を表している。研究者らはいくつかの発見について議論した。まず第一に、一部の絵画には、研究者らが事前に予測した食物が含まれていたということ。魚介類はオランダの絵画において最も一般的であり、このことは国境の半分近くが海に面していることから予期されていた。第二に、一部の絵画には、研究者らが事前に予測した食物が含まれていなかったということ。国境の多くが大小さまざまな海に面しているアメリカ、フランス、イタリアの絵画の中には、魚介類や魚はどちらも12%未満しか現れなかった。一般的な食物である鶏肉については、どの絵画にもほとんど現れなかった。第三に、一部の絵画には、研究者らが予期しなかった食物を含むものがあったということ。たとえば、わずか6%しか海に面していないにもかかわらず、ドイツの絵画の20%以上に魚介類が含まれていた。また、レモンはオランダの絵画の中で最も多く見られたのだが、実はオランダにレモンは自生していないのである。
図1
絵画に登場する特定の食物の頻度の割合
食物 | アメリカ | フランス | ドイツ | イタリア | オランダ |
リンゴ | 41.67 | 35.29 | 25.00 | 36.00 | 8.11 |
パン | 29.17 | 29.41 | 40.00 | 40.00 | 62.16 |
チーズ | 12.50 | 05.88 | 05.00 | 24.00 | 13.51 |
鶏肉 | 00.00 | 00.00 | 00.00 | 04.00 | 02.70 |
魚 | 00.00 | 11.76 | 10.00 | 04.00 | 13.51 |
レモン | 29.17 | 20.59 | 30.00 | 16.00 | 51.35 |
タマネギ | 00.00 | 00.00 | 05.00 | 20.00 | 00.00 |
魚介類 | 4.17 | 11.11 | 20.00 | 4.00 | 56.76 |
研究者らが今回の研究をこれまでの研究と比較して出した結論は、フードアート(食物を描いた芸術作品)というものは、必ずしも実生活を描き出すわけではない、というものであった。研究者らはこれについていくつかの説明を提供した。一つの説明としては、画家が食物を描くのは、より広い世界への興味や関心を表すためだということ。別の見方では、画家はより難しい食物を描くことによって己の技量を示したいと考えたということ。たとえば、描かれたレモンの表面や中身の複雑さ具合は、ひょっとすると、人々、特にオランダの画家たちの間でいかに人気があったかを物語っているのかもしれない。これら以外の解釈も可能であるため、異なる観点から絵画を調査する必要がある。それらはすなわち絵画が完成した時代と食物の文化的関連性である。両者の話題については次章で取り上げることにする。
(Brian Wansink 他(2016) Food Art Does Not Reflect Reality: A Quantitative Content Analysis of Meals in Popular Paintings の一部を参考に作成)
問1 ②
この研究における「リンゴ」のカテゴリーでは、2個の丸のままのリンゴと1個の半分に切られたリンゴが登場する1つの絵画は (あ33あ) とラベル付けされる。
① 0
② 1
③ 2
④ 3
第2段落3~6行目。4行目の“with absence coded as 0 and presence coded as 1”の読み取りは「付帯状況のwith」という文法知識が必要なため難しいかもしれないが、For exampleの部分にわかりやすく書かれているため正解すること自体は難しくない。
問2 ④
図1によると、(あ34あ) の絵画は (あ34あ)。
①フランス(の絵画は)ドイツの絵画と比べてリンゴを含む割合が低かった。
②フランス(の絵画は)オランダの絵画と比べてチーズを含む割合が高かった。
③イタリア(の絵画は)アメリカの絵画に比べてパンを含む割合が低かった。
④イタリア(の絵画は)ドイツの絵画に比べてタマネギを含む割合が高かった。
本文を読まずに解かれるのを防ぐためか、オランダの名称が選択肢と図1で別にされている。こんなところにも作問者の工夫と苦労が垣間見える(気がする)。
問3 ②
図1と本文によると、(あ35あ)。
①人々がよく鶏肉を食べたので、アメリカの絵画の中には鶏肉が頻繁に表れた。
②イタリアの大部分は海に面しているが、イタリアの絵画には魚は10分の1も現れなかった。
③レモンはオランダが原産なので、オランダの絵画の半分以上に登場した。
④魚介類が5ヵ国それぞれの絵画の半分に登場したのは、それらが海に面しているからである。
正解である選択肢②は図1だけでも十分根拠になるが、“one tenth”「10分の1」という分数表現が含まれているため、読み取れなかった人がいたかもしれない。
問4 ③
本文によると、これらの絵画の中の食物は (あ36あ) 可能性がある。
①描いた画家の歴史の知識を証明している
②自国にとどまりたいという願望を示している
③描いた画家の技量と能力を示している
④描いた画家の地元食材への愛情を反映している
最終段落4~5行目に書かれている通り。各選択肢の最初の動詞が全部異なるが、どれも「示す・表す」といった似たような意味なので気にする必要はない。語彙力を試す意図もありそうだ。昨年度までは「本文の後に続く可能性の高い内容はどれか」という設問だったが、今年は単純な内容一致問題になった。
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