コロナによるステイホームの影響で、受験勉強系のYouTuberの動画閲覧数が軒並み伸びているようです。
英語に限らず、いわゆる教育系YouTuberの方々はほとんどが東京大学をはじめとする高学歴の肩書を持っています。
そんな動画を見て、多くの児童・生徒・学生たちの学習が促進されることはもちろん良いことなのですが、私が見ている生徒も含めて、やや「危険な」視聴傾向があるように思えたので、ここで記事にしておきたいと思います。
たった1つの注意点とは
どんなに動画を見ても成績が伸びない人に足りないのは、「心から」そのYouTuberのやり方を真似ることです。
この「心から」という部分について説明しつつ、動画の正しい視聴方法と危険な視聴方法についてまとめておきます。
なぜ彼らはYouTuberをやっているのか?
簡潔に言えば、普段の勉強の延長に過ぎないからです。
教育系YouTuberの普段の勉強とは、「人に教えることができるまで習得する」ということなのです。
彼らの考える「習得」とは、先生の代わりに教壇に立ち、まだ学習していない人向けに説明することができること、と言い換えることができます。
逆に言えば、人から質問されて説明できないことは「習得」できていないのと同じです。
たとえばこういうことです。
英語長文とその和訳を見て、なぜその英文がその和訳になるのかを、単語の意味だけでなく文法・語法などの観点から説明できる。
数学の問題と解答を見て、1つ1つの式の意味だけでなく、なぜその順序を取るのか、誤った解法に進んでしまう原因は何かということまで説明できる。
教育系YouTuber(に限らず教える職業の人)は、日頃から常に上のような意識を持って勉強しています。
特に教える相手がいなくても、心の奥底で無意識のうちに「説明してと言われたら説明できる」ことをゴールとして設定し、日々それをクリアして積み上げているのです。
というわけで、冒頭に書いた通り、YouTubeに解説動画をアップすることは、彼らにとっては普段の勉強に「撮影」という一手間を付け加えたに過ぎないのです。
実は一番勉強になっているのはYouTuber本人
経験すればすぐにわかることですが、人に教えるというのは簡単なことではありません。
その人がどこでつまづいているのか、何が分かれば道筋がきちんとつながるのか、そういうことを細かく分析し、きちんと言葉や記号などで示してあげる必要があります。
そこまでやっていくと、自分自身でも忘れていたり、気付いていなかったりしたことに改めて気づかされることが多々あるのです。
つまり、教える過程で得られた気付きにより、その人はさらなるレベルアップを図ることができるのです。
しかも、必要に迫られて気付いたり覚えたりすることは能動的な学習(興味関心の強い事柄)なので、強く印象に残るため非常に忘れにくいのです。
教育系YouTuberはもちろんこのことに気付いており、彼らにとって解説動画をアップすることは、収入や人気を得るだけでなく、自分の知識を強固にし洗練させるという目的もあったりするのです。
YouTube動画を使った勉強法
結論として、YouTube動画で成績を上げるたった1つの秘訣は「心から」そのYouTuberを真似ること、言い換えれば「そのYouTuberと同じように説明ができる」ことを目指すことです。
スマホなど撮影できるものがあるなら、実際に自分が説明する姿を撮影すると良いでしょう(音声だけでもかまいません)。
もちろん、言葉の一つ一つまで同じである必要はありませんし、YouTuberが使った具体例ではなく、自分なりに考えた例などがあればそれでもかまいません。
動画を見たときに、1つの問題を解くにあたり、それに必要な知識とその使途および順序を押さえられれば、比較的簡単にできるはずです。
これはたとえば、面接試験で事前に用意したセリフを暗唱するのではなく、言うべきポイントのみを覚え、言葉そのものはその場で考えていく作業と通じるところがあります。
自分自身の言葉だからこそ人の心に響くのですが、これは他人だけでなく自分にとっても同じなのです。
あとは自分の説明を客観的に聞き、疑問が湧く部分はないか、矛盾点はないかといったところを厳しくチェックしていくと良いでしょう。
この方法を継続できれば、成績が向上しない人はいないと断言できます。
YouTube動画で勉強する際の注意点
動画を見て「すごく勉強になった!」と思っても、結局成績が伸びない人がいます。なぜでしょう。
これは、「楽しむ」に重点を置きすぎていることが原因です。
問題が解けることや理屈が分かることというのは「楽しい」のです。
だから、普段なら机に30分も座っていられないような人でも、平気で1時間以上の動画を見ることができます。勉強の体裁を取っているだけで中身は一種の娯楽に近いのです。
例えるなら、手品のタネ明かしを見るような感じかもしれません。
そんな仕掛けがあったのかとか、そんなタイミングでポケットに入れていたのかとか、感心しきりで見入ってしまいますよね。
でも、いざ自分がその手品をやるとなったら、やっぱり練習が必要なことがわかると思います。トリックがわかったからといって、自分ができることにはならないわけです。
上に書いたように、学習したことがしっかり身に着く人というのは「人に教えられるようにする」という意識のある人なのです。
教育系YouTuberはみなそういう人たちなのです。
彼らのように高学歴になりたいのであれば、娯楽で終わらせることのないように注意しましょう。
たった1つの注意点の注意点
「人に説明できるまで理解する」という部分について補足します。
取れない宝箱
理解を重視するあまり、ちょっとした不明点が気になり、永久にそこから先に進めなくなる人をときどき見かけます。
たとえば、「雨が降る。」を英語で It rains. と言いますが、なぜ主語が it なのかわからない、もう英語は意味不明だという人。
たとえば、3+2×5=13 という式で、なぜ掛け算を先にするかわからない、もう算数は嫌だという人。
どちらも私が実際に見た生徒の話です。
そういう人には、「理屈を知りたい気持ちも大事ですが、とりあえず覚えるだけ覚えておき、学習が進んでから理解できるような説明を探すという形をおすすめします。」とアドバイスします。
基本的な学習というのは、最低限覚えるべきことを積み上げていった結果、それらがつながって応用的な理解に至るという構造があるのです。
ですから、「疑問に思うことは悪いことではありませんが、今はまだその理屈を理解するには知識が足りないのです。その疑問は忘れずに心にしまっておいて、勉強が進んだらもう一度考えてみると良いでしょう。」ということになります。
ゲームで言うなら、開かないトビラの向こうに宝箱が見えているようなものです。今は先に進み、カギを取ったら戻ってこよう、というのと同じことです。
もしかしたら、その疑問がスッキリ説明できたら世界初の快挙だったりするかもしれません(そういう意味では、その疑問はまさに宝箱だと言えます)。
ただし、ちょっと難しい疑問は何でも後回しにすべきと言っているわけではありません。今解決すべき疑問なのかどうかを確かめるのは怠らないでください。
教科書を隅々まで読んでも書いておらず、先生に質問しても「今は覚えておけばそれでいい」と言われたら、「ああ、この疑問は今解決すべきものではなく、未来までとっておくべきものなんだ」と思うようにしましょう。
また、先生に「覚えるだけでいい」と言われたことが本やネットなどで説明を見つけて解決できた場合、先生に対してモヤモヤするかもしれませんが、ほとんどの先生に悪意はないことも知っておいてください。
質問をしたあなた自身がどこまで理解できているか定かでない場合、あなたの知識を1つ1つ確認していては時間がかかります。しかし先生には時間がないのです(これは先生個人の責任ではなく、職場環境や制度の問題が非常に大きいです)。
あるいは、先生自身がその疑問を抱いたことがなく、それで困った経験もないために理屈まで考えるに至っていない場合もありますが、この場合も先生を責める必要はありません。疑問を抱いたあなたの発想力と、それを見事に説明してのけた人が称賛されればそれでよい話なのですから。
まとめ
教育系YouTuberの動画を参考にするなら、表面的な知識やテクニックではなく「心から」真似しましょう。
いついかなるときでも「人に教えられる程度まで理解する」ことを目指しましょう。
勉強のために見るのか娯楽のために見るのかハッキリしましょう。
開かないトビラの前で動かずにいるのではなく、先に進んでカギを取ってきましょう。
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