萩生田文部科学大臣の失言問題が世間で話題となっていますね。
「身の丈入試」なんていうのがもはや流行語大賞にでもなりそうな勢いです。
しかし果たして、憲法問題にすら発展しかねないレベルで重要な発言だということに気付いている人はどれほどいるのでしょうか。
受験と無関係な一般人にとっては、単なる面白発言の一つに過ぎないのではないかと思います。
「身の丈でいいじゃないか」とか、「無理をするのはよくない」とか言っている人が良い例です。この発言を擁護するのは、大臣の身内か、何の話題であるかもわかっていない野次馬だけです。
ただ、「身の丈入試」という語呂の良い言葉が出てきたことで、世間の目がようやく大学入試改革の問題点に向けられそうで、それ自体は喜ばしいことだと思います。
実施延期という言葉も報道され始めてきましたし、受験生たちの入試が本当に受験生たちにとっての入試になることを願ってやみません。
さて、閑話休題。
「身の丈入試」を英語で言うと?
名詞表現として英語にするのは難しいので、よくある言い回しを紹介しておきます。
Choose a university according to your academic ability.
「身の丈に合った大学を選びなよ。」
“according to ~”は「~に合わせて/したがって」、”academic ability”は「学力」なので、「あなたの学力に合わせて」となり、極めて普通の言い回しです。
成績の良い受験生に対して使えばもっと上の大学を目指しなよという意味になり、成績の悪い受験生に対しては、高望みしすぎるなよ、という意味になります。
後者はやや意地悪な響きがありますが、問題発言として捉えられる類の言葉とまではいかないでしょう。勉強をしない本人にも責任はあるわけですからね。
しかし一方で、こんな英訳も可能です。
Choose a university within your means.
このように言うとマズいです。問題発言です。
話の文脈で考えると、萩生田大臣のセリフは英訳するとこっちになりそうなんですよね。
meansとは何か、この文の何がマズいのかは次の項目を参照してください。
「身の丈に合った」の英語表現いろいろ
live within one’s means
「身の丈に合った生活をする」という意味のイディオムで、日常的にも意外と見聞きする表現です。
live within one’s means
ここでのmeansは「収入」の意味の名詞で、incomeと言い換えても大丈夫です。直訳はそのまま「収入の範囲内で生きる」ですね。
英英辞書の定義と例文を引用します。
Definition:
to spend money only on what one can affordExample:
He began to save money when he finally learned to live within his means.
ここで登場した”within one’s means”を用いて「身の丈入試」に当てはめたのが、冒頭の例文です。
再掲します。
Choose a university within your means.
これは当然ながら「収入の範囲内で大学を選べ」という意味になりますから、経済格差を容認し、教育を受ける権利の平等性に反する文言であることがわかります。憲法問題に発展しかねないというのはこの部分です。
萩生田氏が批判されている理由もここにあるのです。
make ends meet
「身の丈に合った生活をする」のもう一つの言い方です。これも一種のイディオムであり、大学入試などでも出題されたことがあります。
make ends meet
ここでのendsは「帳尻」の意味で、直訳は「帳尻を合わせる」です。
※「帳尻」とは「帳簿の尻」のことで、この場合の尻は「最後の部分」の意味です。「帳尻を合わせる」とは、収入の最後と支出の最後が合うようにする、つまりプラスマイナス0にするということです。
Definition:
to have only just enough money to buy the things you needExample:
When Mike lost his job, we could barely make ends meet.
ちなみに、大学入試で出題された問題はこちらです。
空所A・Bに入れるのに最も適切なものを1~4の中から1つ選びなさい。
My mother is trying very hard to ( A ) ends meet, ( B ) she never lets me buy anything unnecessary.
- A: get B: but
- A: get B: so
- A: make B: but
- A: make B: so
センター試験(2014本試 第2問A 問10)
Cut your coat according to your cloth
少し古い英語のことわざですが、まだまだ現役で使われています。
Cut your coat according to your cloth.
直訳すると、「あなたの布にあわせてあなたのコートを切れ」となりますが、これでは意味がよくわかりませんね。
この文のcutは、もともと持っているコートを「切ってしまう」ということではなく、布を切ってコートを「作る」という意味です。
※こういう場合は「切る」の代わりに「裁つ」という言葉を使うこともあります。
要するに、「上着が欲しけりゃ自分で作れ。自分が持っている布の大きさで我慢しろ。」といった意味です。自分の服を自分で作らなければならなかった時代の言葉というわけですね。
これが転じて「身の丈に合わせてやりくりしろ」という意味で用いられているのです。
英英辞書に掲載されている定義と例文を見てみましょう。
Definition:
to make plans and decisions that are based on what you have and not what you would likeExample:
It is up to organizations which were supported by the taxpayer to cut their coats according to the cloth available.
know one’s limit
「身の丈に合わせる」は「身の程を弁える(わきまえる)」とも言えます。
萩生田大臣の発言を揶揄(やゆ)する人々の多くはこの意味で取っています。
これを英語で言うと、
You should know your limit.
となります。
直訳で「自分の限界を知るべきだ」となり、十分意味が通じます。
似たような表現で、
You should remember your place.
というのもあります。
この場合のplaceは「立場」の意味で、直訳で「自分の立場を思い出す/覚えておくべきだ」となりますね。
match one’s height
最後は読んで字のごとく、「身長に合わせる」という表現です。これには特に特別なニュアンスはありません。
“match your height”で検索すると、次のような記事がヒットしました。
A single piece of string could tell you if you’re a healthy size. Cut the string to match your height, then fold it in half. If it reaches around your waist, you’re in good enough shape to be healthy, say researchers who studied data on waist-to-height.
「Web MD」より引用
まとめ
いかがでしたか?
みなさんの英語の「身の丈」が少しでも伸びてくれたなら幸いです。
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