英語を勉強しようと思って本屋さんへ行くと、英語関連の参考書がありすぎてどれが良いかわからないという人もいるでしょう。
そんな人に、私がこれまで読んできた参考書の中から絶対に役立つものを厳選してご紹介します。
日本人の英語
今回は、私が初めて読んだときにダントツで衝撃を受け、今でもときどき読み返しては新しい発見を得ることが少なくない名著中の名著をご紹介します。
ネイティブ・スピーカーにとって,「名詞にaをつける」という表現は無意味である
正直言って、この本に出てくるすべての言葉が衝撃的と言ってもいいくらいです。
それでも、あえて衝撃度とも言うべき順位をつけるなら、私が第1位に選ぶのが上記の見出しの一文です。
以下にこの一文を含む一節を引用します。
日本の英文法書では”a(an)”の「用法と不使用」を論じるとき「名詞にaがつくかつかないか」あるいは「名詞にaをつけるかつけないか」の問題として取り上げるのがふつうである.ところが,これは非現実的で,とても誤解を招く言い方である.ネイティブ・スピーカーにとって,「名詞にaをつける」という表現は無意味である.
英語で話すとき―ものを書くときも,考えるときも―先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞でなく,aの有無である.そのカテゴリーに適切な名詞が選ばれるのはその次である.もし「つける」で表現すれば,「aに名詞をつける」としかいいようがない.「名詞にaをつける」という考え方は,実際には英語の世界には存在しないからである.
これを読んだ当時、それなりに英語を勉強してきた自負があったのですが、むしろそのせいか非常に大きな衝撃を受けました。
「aに名詞をつける」だって・・・!?
今でもそのときの気持ちはよく覚えています。涙が出そうになったくらいですから(実際に出ていたかも)。
この部分はまだ本のごく初めの箇所からの引用ですが、これと同じくらい日本人には思いもつかないようなネイティブ・スピーカーの言葉が次々と登場します。
この本を読んでからというもの、相変わらず仕事柄多くの英語関連書籍を読んでいますが、知識に関する事柄についてはだいたいどこかで見たことがあるような気がするようになりました。
実際、少し表現が異なるだけで、基礎となる知識はこの本に書かれている、といったことが少なくありません。それくらい、この本だけで重要かつ学校では教わらない知識が身につくのではないかと思います。
著者はアメリカ人
この本は日本語で書かれていますが、著者は生粋のアメリカ人です。編集者のチェックは入っているでしょうが、すべて著者本人の言葉です。
著者であるマーク・ピーターセン氏はアメリカのウィスコンシン州出身のネイティヴ・スピーカーです。
長く明治大学政治経済学部で教鞭をとられてきましたが、2017年3月に定年退職されています。
大学受験生にとっては、徹底例解ロイヤル英文法の英文校閲者だと紹介した方がいいかもしれません(2011年にはコミュニケーションを重視した表現のための実践ロイヤル英文法(例文暗記CD付き)も発売されています)。
そんな著者からの、英語学習者への心のこもった(こもりすぎた?)衝撃のアドバイスがこちらです。
ところで私自身は,この2年間,日本語を書く仕事が多かったが,まだそれに慣れていない.いまだにフラストレーションばかり感じている.語彙が限られているし,言い方が自然であるかどうかは,自分の判断力だけでは自信が全然ない.いくら時間をかけて書いたとしても,書き上がったところで,「いいものが書けたな」という満足感を得たこともない.
私は,和英大辞典を壁に放り投げ,研究室の窓を開けて「日本語が嫌い」と叫んだことがある.恐ろしいことに,それは,日本語で叫んだのである.かなり夢中になっていて,かなり頭がおかしくなっていたので,日本語に関して不満を日本語で言ってしまった.これは,自分からいうのはおかしいが,そういうような精神状態を読者にも薦めたいと思う.”read, read, read”の上にさらに”write, write, write”のあまり,フラストレーションが高まってきて,頭がおかしくなり,”I hate English!”とつい英語で叫んでしまうくらい,英語の「頭脳環境」に入ってみてほしいと思う.周囲の日本語の環境を変えることはできないかもしれないが,集中的に努力すれば,日本にいながら頭脳の中の環境を英語に変えることはできると思う.そうすれば,英文の読み書きもかなり上手になる.また,しばらくの間,英語から離れていれば,頭はほとんど元どおりにもどるので,だれも後悔しないと自信をもって言える.もし,そのつもりでこの本を読んでいただければ,なにより嬉しく思う.
私もそれなりに頑張って英語を勉強してきましたが、どんなに大変な思いをしたつもりでも、頭が混乱して英語で叫ぶほどの苦しみを味わってきたわけではありませんでした。
著者はまったく逆の立場から、日本語に対してこれほどまで真摯に向き合い、自分の言葉で日本人学習者に英語を教えてくれているんだ、と感じたとき、大変勇気づけられたことを覚えています。
同時に、楽して外国語を習得する方法などないが、本人の努力次第でいくらでも上達できるものだということを、表面的ではなく、感覚として理解したのもこのときだったと思います。
英語の勉強に行き詰まりを感じている人ほど、それこそ砂漠が水を吸収するように、あっという間に読み終わる一冊ではないでしょうか。
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新書は発見の宝庫
この本に限らず、何か勉強をしたいと思ったときに手軽に読めて、なおかつ有用な知識を得られる手段として、新書というジャンルを押さえておくべきです。
英語に限らず、数学でも理科でも、大学より先で習うような事柄や逆に学校では習わないことすらも含めて、市販の参考書よりも内容が充実していたり、読みやすく書かれていて理解しやすいものが実はたくさんあります。
新書サイズといって大きさが決まっており、縦182mm×横103mmと、一般的な漫画本や参考書よりもやや小さめのサイズで、持ち運びなどにも便利です。
特に若い人たちの間では意外と知られていない存在のようで、私が接する生徒には毎年のようにお勧めしており、生徒から好評を得るものも多いです。
ブックオフなどの古本屋さんでは108円で売られているものがたくさんありますから、知らなかった人はぜひこの機会に一度チェックしてみてください。
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