英語を勉強しようと思って本屋さんへ行くと、英語関連の参考書がありすぎてどれが良いかわからないという人もいるでしょう。
そんな人に、私がこれまで読んできた参考書の中から絶対に役立つものを厳選してご紹介します。
実践 日本人の英語
あの名著『日本人の英語』の実践編です。
要するに、実際の答案の添削を通じて、より具体的に英語の間違いを指摘、訂正、解説を行った本ということです。
著者は明治大学の政治経済学部教授として大学生に英作文を教えてきており、そこで添削してきた間違いを紹介する形で解説してくれているのです。
明治大学の学生の皆さん、ありがとう。
この本の初版は2013年4月と比較的新しいので、まだ読んでいない人はぜひどうぞ。
大学の授業で日本人の学生が書いた英作文を見ると・・・
本書は著者が英作文の授業で受け持った大学生の答案添削が中心なので、大学受験生にとって非常にためになることは間違いありません。
以下に間違いを含む例として挙げられているものを引用します。
あなたは間違いに気づけますか?
I have a part-time job at a coffee shop of Yoyogi. ―p.5
私は,代々木の喫茶店でアルバイトをしています(?)
In the spring vacation, I went to Thailand with my friend. ―p.17
私は,春休みに,友人と一緒にタイに行きました(?)
I want to study English in U.K. for one year. ―p.43
私は1年間イギリスで英語の勉強をしたい(?)
I am joining a jazz dance circle. ―p.47
今,ジャズダンスのサークルに入っています(?)
After I graduate, I enter a bank. ―p.65
私は卒業後,銀行に入社する」とはならない(?)
When I am in only Gunma, I get hay fever. ―p.107
私は群馬にいるときだけ,花粉症が出るのです(?)
I like the stone stairway at Kuon-ji temple. Climbing it is so hard for many people. ―p.161
私は久遠寺の石段が好きです.上るのが多くの人にとってあまりにも辛いのです(?)
以上全て出典はマーク・ピーターセン『実践 日本人の英語』(2013, 岩波書店)
前作『心にとどく英語』はとにかくテンポが良いと書きましたが、今作はそれを上回るテンポの良さで、これでもかと知識の波が襲ってくるような感覚になります。
著者が強調するため、あるいは補足のためにある程度前作までに出てきた知識が出てくることも多いのですが、前作までを読んでいない人にとっては、数ページでお腹一杯になってしまうような気がするかもしれません。
というのも、上に引用した英文はどれも話の入り口に過ぎず、それらの訂正時に利用した知識を応用してさらに理論が展開していくのです。
その中には、これまでの著作で書かれた知識もあるため、それを読んでいた場合は、「ああ、ここでつながるのね」という感じで良い復習になりますが、そうでなければ、どんどん進んでしまって置いて行かれているような気がしてしまうかもしれません。
ただ、だからといって前作から順に読まないと分からないわけではありません。理解するのに時間がかかるようであれば、理解できるまで何度も読んだり、あるいは先に進んでから戻るなりして、じっくりと時間をかけて読めばよいと思います。
アマゾンレビューにも「読む時間を割くだけの価値がある本」と書いている人がいますが、まさにその通りだと思います。かくいう私自身も、もう何度読み返したかわからないくらい読みました。とにかく知識量が膨大なのです。
本人は頭がいいのに,書いた文章が極めて「子どもっぽい」
目次を見ればわかるように、今作にははっきりと「大人の」英語表現という観点が盛り込まれています。
大学生の英作文を指導していると,本人は頭がいいのに,書いた文章が極めて「子どもっぽい」というミスマッチにびっくりすることが多い.
(中略)
外国語で文章を書くときに「文体」の問題まで考えることは確かにとても難しいが,少なくとも大人が使う表現にしたいなら,「やってはいけないこと」や「気をつけたほうがいいこと」を覚えておいて損はない.「子どもっぽい英語」と思われない,大人にふさわしい英文を書くためのポイントは何だろうか?
これは私自身、ネイティヴと本格的なやり取りを始めた頃に強く実感したことですが、やはり書き言葉と話し言葉は違う、ということに尽きます。
日本人などの非ネイティヴスピーカーは、口で話をするときは多少のカタコトさや言い間違いは大目に見てもらえるのですが(もちろんそれに甘えないように頑張るのですが、話す中でミスを0にするのは相当難しいですね)、文字にされたものは甘く見てもらえない、ということです。
十分に調べ、考え、直すことができるはずのものが間違いだらけでは、本人の程度もそんなものだと思われてしまっても言い訳はできないのです。
大学受験生など、まだまだネイティヴスピーカーと接する機会も少なく、まだ勉強中だから、という弁明がきくうちは実感は湧かないと思いますが、対話形式のコミュニケーションと、文字でのコミュニケーションは、要求される質が段違いだということを覚えておいたほうが良いでしょう。
社会に出て、何らかの巡りあわせでネイティヴスピーカーと仕事をすることになったとき、相手に幼稚な印象を与えてしまっては対等な関係を築くことが難しくなる可能性があります。
実は、あとがきに次のような言葉があるのです。
この本は,学生たちの作る英文にみられる問題点をきっかけにして,英語を書くという実践に少しでも役立つように,と考えて書き始めた.彼らが社会に出て出会う状況も想定したいと思って,そういう例文も作ってみた.
著者は単に英語ネイティヴというだけでなく、教育者という立場からもこの本を書いていることがわかります。読んでいると、まるで授業を受けているように感じるのはこのためかもしれませんね。
ぜひご一読ください。
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