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第5問
正解・配点
問1:3(3点)
問2:4(3点)
問3:4→3→5→1(3点)※完全解答
問4:1, 3(3点)※順不同、完全解答
問5:1(3点)
和訳・解説
本文
あなたは国際報道を用いてプレゼンテーションコンテストに出場する予定です。口演の準備として、以下のフランスの報道記事を読みなさい。
今から5年前、Mrs. Sabine Rouas は飼い馬を失った。彼女は20年間その馬と共に過ごしてきた。老衰だった。彼女はその時、もう二度と馬を飼うことはできないような気がしていた。寂しさゆえに、彼女は何時間も隣の牧場にいる牛たちを眺めて過ごしていた。そしてある日、彼女は牧場主に牛たちの世話を手伝えないかと尋ねたのだった。
牧場主が許可を出したので、Sabine は働き始めた。彼女は1頭の牝牛と急速に友情を発展させていった。その牛は妊娠していたので、他の牛たちよりも多くの時間を過ごした。その牛が子牛を産んでからは、その子牛が Sabine のあとをついて回った。残念なことに、牧場主は牧場で雄牛を育てることには興味がなかった。牧場主は、309と呼んでいたその子牛を肉市場へ売りに出す計画を立てた。Sabine はそんなことはさせるわけにはいかないと決心し、牧場主にその子牛と母牛を買い取らせてくれないかと尋ねた。牧場主がこれを承諾したので、彼女は2頭を買い取った。それから Sabine は、309を町まで散歩させ始めた。およそ9ヶ月後、ようやく2頭の牛を移動させることが許可されたので、2頭は Sabine の農場へと引っ越した。
それから間もなく、Sabine は1頭のポニーを譲られることになった。彼女は当初、自分は本当にそのポニーが欲しいのかどうか確信が持てなかったが、以前の馬との記憶が辛いものではなくなっていたことから、 彼女はそのポニーを受け入れ、Leon と名付けた。そして彼女はかつての趣味にもう一度戻ることを決め、そのポニーに障害飛越の技を教え始めた。309はその名を Aston に改められ、ほとんどの時間を Leon とともに過ごしたことで2頭はかけがえのない親友同士となった。しかし、Sabine が Leon に施す調教訓練を Aston が注意深く見ていたことも、あろうことか Aston がいくつかの技を習得するなどということも、彼女にとっては予想だにしないことだった。その若い雄牛は常歩(なみあし)、襲歩、停止、後退、方向転換といった命令を即座にマスターしてしまった。彼は Sabine の声にまさに馬のように反応した。しかも、体重が1,300kgもあるにもかかわらず、わずか18ヶ月で、Sabine を背中に乗せたまま1メートルの高さの障害物の飛び越える方法を身に付けてしまった。Leon を見ていなかったら、きっとこれらのことができるようにはなっていなかっただろう。しかも、Aston は距離感を把握することができ、ジャンプする前に歩幅を調節することもできた。Aston はまた、Sabine からの助けがなくとも、自分の欠点に自ら気付いて修正することができた。そんなことができるのは、エリート中のエリートであるオリンピック基準の馬だけなのだが。
今では、Sabine と Aston はヨーロッパ中の週末フェアや馬術ショーに行って技を披露している。Sabine は言う。「お客さんの受けが良いの。たいていの場合、人はすごく驚くし、最初は、彼が大きいからちょっと怖がってしまうけど。だって馬よりかなり大きいもの。」ほとんどの人が、角を持った雄の牛のそばにはあまり近寄りたくないだろう。しかし、いったん彼の本来の性質がわかり、彼がパフォーミングしているのがわかると、よくこう言われるわ。「なんだ、とってもかわいいやつじゃないか。」
「見て!」そう言って Sabine はスマートフォンから Aston の写真を見せてくれた。そして続けた。「Aston がまだ小さかった頃は、犬みたいにリードをつけて外を散歩させたものよ。人間に慣れさせるためにね。彼が人を嫌がらないのはそのお陰かもね。彼はとてもおとなしいから、子どもは特に彼のことを見るのが好きで、近くに寄りたがるのよ。」
ここ数年の間に、巨大な障害飛越え牛のニュースは急速に広まっていった。今や Aston は増え続けるオンラインフォロワーの注目の的である。Aston と Sabine はときどき自宅から200~300kmも離れた場所へ行かなければならないこともある。それはつまり、宿泊を伴わざるをえないということを意味する。Aston は馬小屋で寝なければならないが、彼にはまるで広さが足りないのだ。
「Aston は馬小屋は好きじゃないの。だから私が一緒に入って寝てやらないといけないのよ。」と Sabine は言う。「でもね、彼が目を覚まして姿勢を変えるとき、彼は私をつぶさないようにとても慎重なのよ。本当に、とても優しいのよ。ときどき寂しくなることもあるし、あんまり長い間 Leon と離れ離れになるのは好きじゃないけど、それ以外は、彼はとても楽しそうなのよ。」
※スライド部分省略
【解説】
インターネットで検索すると、Sabine Rouas さんと Aston は実在の人物、そして牛であった。26ページのイラストが牛に見えないとSNS上で文句を言っている人もいるようだが、実物の写真と見比べるとかなり似ていることがわかるだろう。さて、内容が実話かどうかはさて置き、本試験中唯一の物語調の文であり、内容が面白いので一息に読んでしまえるものだったのではないだろうか。これまでのセンター試験の第5問もそうだったが、ストーリー性のある文章は初めから終わりまで通読して全体の印象をはっきりと記憶に残した方が設問もスムーズにこなせるもので、逆に段落ごとに設問を解いたりすると、選択肢などで本文にない情報が紛れ込み、全体の印象が不安定になってしまいかねないのでは、と私は個人的に感じている。単語や文法にいちいち躓くようでは難しいだろうが、このくらいの英文は通読できるくらいのレベルまでは、すべての大学受験生に到達してもらいたいと思う。
【語句】
・preparation「準備」
・spend O Ving「VしてOを過ごす」
・nearby「近くの/近くで」
・farm「農場」
・ask O if SV「SVかどうか尋ねる」
・cow「牝牛」
・bull「雄牛」
・pregnant「妊娠した」
・unfortunately「残念なことに」
・farmer「牧場主」
・take O for a walk「Oを散歩に連れていく」
・at last「ついに」
・permission「許可」
・no longer「もはや~ない」
・accept O「Oを受け入れる」
・close friend「親友」
・expect O toV「OがVすることを予期する」
・pay close attention to O「Oに強い注意を払う」
・routine「決まった手順で行う作業」
・pick up O「Oを身に付ける」
・trick「芸/技」
・command「命令」
・despite O「Oにもかかわらず」
・weigh C「体重がCある」
・leap over O「Oを飛び越える」
・adjust O「Oを調節する」
・notice O「Oに気付く」
・fault「欠点」
・correct O「Oを修正する」
・standard「基準」
・show off「披露する/見せびらかす」
・a bit「ちょっと」
・scared「怖い」
・massive「巨大な」
・rapidly「急速に」
・attraction「魅力のあるもの」
・stay overnight「一泊する」
・crush「押しつぶす」
・gentle「優しい」
・other than O「Oを除けば」
【文法】
・nor had she expected ~
⇒ 接続詞 nor が文頭に置かれることで後の文は疑問文の形をとる(倒置)。
・with Sabine on his back
⇒ 付帯状況の with と呼ばれる用法で、直後の名詞とその後の語句との間にbe動詞を補うと意味が分かりやすい。
・Aston might never have learned those things without ~
⇒ without ~ が「もし~がなかったら」の意味になる仮定法表現。
・That’s something only ~
⇒ something の後に関係代名詞が省略されている。
・I used to take him out for walks
⇒ 助動詞 used to は「かつては~だったものだ」という意味で、今はもうそうではないことを暗示する。
・so that he would get used to humans
⇒ get used to O「Oに慣れる」は重要表現で、上の助動詞 used to と見分けができないといけない。もちろん助動詞ならば to の直後は動詞の原形であり、「慣れる」の意味の場合は O、すなわち名詞なので品詞の意識があれば見分けることは難しくない。またこの文は so that S would V「S が V できるように」の表現でもあり、重要表現の塊のような文である。
設問・選択肢
問1 あなたのプレゼンテーションに最も相応しいタイトルはどれか。[30]
- 動物愛護者がポニーの命を救う
- Aston のサマー障害飛越えツアー
- Aston、馬のように振る舞う雄牛との出会い
- 牧場主と乳牛との間の関係
【解説】
本文は Sabine が Aston を妊娠した母牛を世話するところから始まり、馬のような牛 Aston の活躍で終わる。どう考えても 3 が正しい。
【語句】
・behave「振舞う」
・relationship「関係」
問2 「誰が誰?」のスライドの組み合わせとして最も適切なのはどれか。[31]
主役級 | 脇役級 | |
1. | 309、Aston、牧場主 | Sabine、ポニー |
2. | Aston、Aston の母牛、Sabine | 309、牧場主 |
3. | Aston、Leon、牧場主 | Aston の母牛、Sabine |
4. | Aston、Sabine、ポニー | Aston の母牛、牧場主 |
【解説】
消去法が簡単。309 と Aston は同一人物(動物)なので、両方を含めている 1 と 2 は真っ先に除外できる。そして絶対に主役級から外してはいけないのは Aston と Sabine なので、Sabine が脇役級になっている 3 は誤りであると判断できる。
問3 「有名になる前の物語」のスライドを完成させるために、4つの出来事を選んで順番に並べなさい。[32]~[35]
- Aston がジャンプを覚える。
- Sabine と Aston がともに数百kmの移動をする。
- Sabine が 309 とその母牛を買い取る。
- Sabine が近所の農場で働きに行く。
- Sabne が 309 を散歩させる。
【解説】
Pre-fame は pre「前」と fame「名声」から成る語なので、「有名になる前」という意味だと推測するのは難しくない。そうすると、すぐに 2 を除外することができる。もちろん、これができなくてもストーリーの全体像が頭に入っていれば正解するのは難しいことではない。
問4 「Aston の能力」スライド用に最も相応しい2つの選択肢を選びなさい(順不同)。[36]・[37]
- 自分一人で自分の間違いを修正する
- ポニーと横並びにジャンプする
- 騎手を背中に乗せてジャンプする
- 馬より速く技を習得する
- 写真用にポーズをとる
【解説】
全文を通して読んでいない場合、この問題は高い確率で失点すると思われる。判断基準は単に本文に書いてあったかなかったかしかないからだ。
【語句】
・order「順番」
・matter「重要である」
・by oneself「自分一人で」
・side-by-side「横並びで」
【文法】
・with the rider on his back
⇒ 付帯状況の with 。詳しくは本文全訳下の【文法】欄を参照のこと。
問5 最も相応しい選択肢を1つ使って「今の Aston」スライドを完成させなさい。[38]
- ファンの数が増えつつある
- Sabine をとても裕福にした
- とても有名なのでもはや人を怖がらせることはない
- 1年のうちほとんどの夜を馬小屋で過ごす
【解説】
最後から2番目の段落に「オンラインフォロワーが増えつつある」とのことなので、1 と合致する。2 は本文に記述なし。3 については「人は体が大きくて角のある牛を怖がる」という旨の記述はあるが、Aston が自分から怖がらせているわけではない。4 については明らかに誤り。馬小屋は小さすぎて好きではないと書かれている。
【語句】
・increase「増加する」
・wealthy「裕福な」
・frighten O「Oを怖がらせる」
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