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共テ英語(第6問B)を授業で使わないで!専門団体が懸念表明

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追記2021年2月16日

大学入試センターの返答

事例①において「これらの人工甘味料については、日本の厚生労働省や食品安全委員会がリスク評価を行い、安全だと認めて、使用・流通を許可しています。科学の世界では認められていない一部の意見を取り上げて、全受験生に読ませて答えさせることが適切とは考えられません。」とのご指摘をいただいております。
 英文の正しい解釈としては、(”Some of the LCSs”ではなく)”Some LCSs”と書いていることから、これらが問題文中に示された甘味料を指すものではありません。
 第6問Bについて、現在、国が指定し、使用を認めている低カロリー甘味料(LCSs)が健康上の問題を有しているとの誤解を招く恐れがあるとのご指摘については、今後の問題作成の際の参考とし、引き続き、そのようなことがないように努めてまいります。

 事例②において「問3」については「正解が2つではなく、1つになる」のではないかとのご指摘ですが、「理由」において「これは”move through the body extremely slowly”という文章から”not digested quickly”を選択させると推測します」とご指摘いただいているとおりです。本文に記載されている英文の内容を読み取り、受験生に解答させる問題としては、特に支障ないものと考えております。

 なお、「理由」の中で、”move through the body extremely slowly” についてもご指摘をいただいていますが、大学入学共通テストの 「 英語(リーディング)」の出題範囲で学習するとされる語数は、高等学校学習指導要領との関係から、試験問題で使用できる語が限られているところです。このため、参考とした原典の表現のままでは 出題することが難しいことから、学習している語に基づき、わかりやすい表現に変更したところです。ご指摘については、今後の問題作成の際の参考とさせていただきます。
 さらに、「理由」の中に、「”digest”という言葉に”absorb”という意味は含まれていません。」とのご指摘ですが、英語の辞典では、”absorb” の意味が含まれている辞書もあります。また、「胃」のトラブルについてのご指摘もいただいていますが、これは”stomach”を「胃」と解釈したことによるものかと思いますが、英語の辞典では、「胃」だけでなく、「胃腸」あるいは「おなか」全体を意味するとされており、ここでも、より広い意味で使用しています。

 ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

なお、FSINはこの返答に対する見解を後日掲載するとしている。

追記ここまで

2021年度大学入学共通テストの英語リーディング(1/16実施)の第6問Bの出題内容について、食品安全情報ネットワーク(FSIN)は1/27、公式ホームページで見解を公表した(ページはこちら)。

英語リーディング第6問の問題・解答・解説・和訳

以下は抜粋。

令和3年度 大学入学共通テスト(英語・リーディング)における問題文選定についての意見と要望

 食品安全情報ネットワーク(FSIN)は、食品の安全に関する必要な情報を収集し、科学的な立場からこれを検証し、自らも科学的根拠がある情報発信をすべく日々活動している、学識経験者、消費者、食品事業者、メディア関係者等の有志による横断的なボランティア・ネットワーク組織です。

 

 令和3年度大学入学共通テストの英語(リーディング)第6問Bで出題された問題文は、食品科学の視点から見て重大な誤りがあります。その中には回答に直接関係する誤りもあります。

 問題文では、健康問題に考慮して甘味料を選択するべきとした上で、低カロリー甘味料ががんを引きおこしたり、記憶力や脳の発達に悪影響を及ぼすかのような記述がされています。これは科学的に誤りであるだけでなく、消費者が自らの選択で安全性を確保しなくてはいけないとの誤解を与えかねないものです。

 たとえ、英語力を問う出題であっても、科学的に誤った内容を試験問題として採用することは望ましくないと考えます。このままでは不適切な内容や記述を、今後毎年、受験生や学校教諭、予備校講師等の方々が過去問題の事例として、学び続けることにもなります。

 以上のことから、以下のことを要望するとともに別紙にてFSINの見解をお伝えいたします。

今後、この出題が過去問題の事例として、授業で活用されたり、受験参考書に掲載されることがないよう、適切な措置を講じていただきたい。

出典:https://sites.google.com/site/fsinetwork/jouhou/exam_english2021?authuser=0
食品安全情報ネットワーク(FSIN)公式ウェブサイト:https://sites.google.com/site/fsinetwork/

FSINが苦言を呈しているのは次の2点である。

  • 人工甘味料が有害であり、特に幼児・妊婦・高齢者にとって危険であると読み取れる記述がある
  • キシリトールとソルビトールの摂取状況について事実と異なる説明がなされている

人工甘味料の危険性についてFSINは、「日本の厚生労働省や食品安全委員会がリスク評価を行い、安全だと認めて、使用・流通を許可」しているとし、有害であるとする記述について「科学の世界では認められていない一部の意見を取り上げて、全受験生に読ませて答えさせることが適切とは考えられません。」と述べている。

また、ガムでおなじみのキシリトールとソルビトールについてFSINは、「キシリトールとソルビトールは「ゆっくり吸収される」という事実はありますが、「体内をきわめてゆっくりと動く」(move through the body extremely slowly)という事実はありません。また「体内をきわめてゆっくり動く」ことが胃のトラブルを起こすという事実もありません。」と述べている。

さらに、本文のみならず、問題は設問にまで波及しているとFSINは苦言を呈する。問3の選択肢のうち、正解の1つには次のように書かれている。

Sweeteners like xylitol and sorbitol are not digested quickly.
(キシリトールやソルビトールなどの甘味料は素早く消化されない。)

これについてFSINは、「キシリトールとソルビトールは低分子のため、消化(digest)されずにそのまま吸収(absorb)されます。」と述べており、単語の定義についても「Cambridge dictionaries of Englishによれば、「digest」という言葉に「absorb」という意味は含まれていません。」と、英語的にも誤りであることを確認済みだという。

ただ、キシリトールといえば「一度に多量に摂取すると、体質によってはお腹がゆるくなることがあります」のような注意書きに見覚えのある人もいるだろう。

これについてFSINは、「ソルビトールなどの甘味料を過剰摂取すると、腸での吸収が遅くなり、大腸に水分が多くたまり、腸の具合が悪くなることはあります。しかし、これは胃のトラブルではありません。」と述べており、本文5段落目最終文の cause stomach trouble(胃のトラブルを引き起こす)を誤りであると断じている。

この記事の執筆時点で大学入試センターは明確な回答を出していない。

センター試験から共通テストに変わった最初の問題は、本来ならばこれからの受験生にとって貴重な資料、過去問題となるはずのものである。

前回書いた記事共テ英語の問題文に誤解を招く表現 日本食品添加物協会が危惧表明では本文の内容に関してファクトチェックの甘さを指摘したが、正解と発表された選択肢が誤りであるとなると、これはとんでもない大問題だと言わざるを得ない。

国公立の出願がすでに開始している今となっては、今更選択肢の正解を変えることは難しいだろう。果たして大学入試センターはどう対応するのか?

大学入試改革の一環として行われたセンター試験から共通テストへの移行。

英語民間試験利用を前提とした問題構成のため、発音や文法に関する設問が消滅することだけが先に決定。

しかし、英語民間試験を利用するのは公平さに欠けるとの見方から反対意見が噴出(身の丈入試)、文科省が延期を表明。

その結果、英語4技能が重要だと言いながら、問うているのは読解と聴解の2技能のみ。

共通テストへの変更・民間試験導入が当初から既定路線であったため、センター試験の功罪を見直すこともせず。

数学と国語では記述式導入が予定されていたが、これも採点方法などを巡って批判が高まり中止に(しかし、なぜか記述式のために60分から70分へ変更された部分だけはそのまま残る)。

2017~2018年にかけて試行調査が行われるも、英語民間試験導入延期・記述式問題の中止という大きな変更があったにもかかわらず、それ以降何の資料も出されないまま、結局2021年度の本試験の日を迎えることとなる。

ただでさえ過去問も何もない新しいテストに不安を抱えた受験生にCOVID-19まで加わり、学校での学習時間の確保さえ危ぶまれる。

6月ごろには週刊文集に「倫理を選ばないで」と題する記事まで載る始末。

かいつまんで言えば「倫理の問題作成が大幅に遅れており、質の良い問題は作れそうにないので受験生に申し訳ない」といったことが暴露されたのである。

フタを開けてみれば、倫理のせいで平均点の差が20点以上開いてしまい、得点調整が必要な事態となった。

倫理を選んだ生徒は高得点が取れたので、「選ばないで」を忠実に守った生徒は損をしてしまったわけだが…。

そして今回のこの英語騒動である。

ここまで受験生を散々な目にあわせてきた今回の大学入試。

誰も責任を取らずに終われるとは到底思えない。

まだ第2日程と特例追試験も残っているし、国公立の二次試験や私大の一般入試等もこれから本格化する時期なので、今はまだ大きな声で批判を始めるときではないが、一生を左右しかねない大学入試において、これだけの規模の不祥事は到底許されるべきことではない。

怒れ、受験生。

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