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第5問の解答・解説・和訳
本文全訳
数週間前、私が犬を連れて山をハイキングしていると、予期せぬことが起きて彼の姿を見失ってしまった。私はあちこち捜したが、彼を見つけることはできなかった。彼とはとても長い間一緒にいたので、まるで自分の魂の一部を失ってしまったような気がした。
その日以来ずっと、不思議な感覚があった。悲しみを超えた先にある――どうにもよくわからない、まるで、山に戻れと何かが私を引っ張っているような、そんな感覚だった。そのため、機会を得るたび、私はリュックを握りしめ、あの山が私に何らかの安心感を与えてくれるのかどうか確かめたのだ。
ある晴れた日の朝、私は山の麓に立っていた。この日は何かが違う感じがした。「どうかわたしを許して」私は大きな声を出した。「絶対に見つけるから!」私は深呼吸をすると、強まりつつある不思議な引力を感じながら歩きだした。よく知っているはずの道を進んでいくと、どういうわけか初めて見る場所にいることに気付いた。少し戸惑った拍子に、私は足を滑らせて転んでしまった。どこからともなくおじいさんが駆け寄ってきて、私を助け起こしてくれた。
その優しく微笑む顔を見て、私は安心感を覚えた。おじいさんは山の頂上へ行く道を探しているとのことだったので、一緒に山を登ることにした。
間もなく、道が見覚えのある感じに戻った。私たちは、犬のことも含めていろいろな話をした。私の犬はジャーマン・シェパードであることを伝えた。若いころに警察犬としてしばらく働いていたが、怪我をしたことで辞めざるを得なくなった。おじいさんは笑い出した。彼もまた警察官だったがすぐに辞めたらしい。理由は言わなかった。その後は長年ボディガードをして過ごしてきたという。彼もまたドイツにルーツを持っていた。私たちはこれらの類似点に笑ってしまった。
いつの間にか大きく開けた場所に着いていたので私たちは休憩を取った。私はおじいさんに、私の犬に何が起こったのかを伝えた。「彼は首輪に小さな熊除け鈴を付けていました。私たちはまさにこの場所に来て熊に会ったのです。熊は私たちの方に振り向きました。私は犬を抱きかかえているべきでした。危険を感じたために、彼はその熊を追いかけたのです。それから彼が見つからなくなってしまいました。私がもっと気を付けていればよかったのです。」
私が話していると、おじいさんの表情が変わった。「それは君のせいではないよ。君の犬はただ君を危険な目にあわせたくなかっただけなんだ。」とおじいさんは言った。「きっと、トモは君にそう伝えたいと思っているはずだよ。それに、あきらめないでくれてありがとう。」
トモは私の犬の名前である。そのことを話していただろうか?おじいさんの言葉が印象に残った。
私が尋ねるより早く、頂上に着くために急ごうとおじいさんが提案した。数週間前に私が犬とやろうとしていたことだった。そこからさらに2時間歩くと、私たちは山の頂上に着いた。私はリュックを下ろし、私たち二人は座って壮大な景色を眺めた。おじいさんは私を見て言った。「山というのは本当に魔法のような体験を得られるところだ。」
私はあたりを見回して休憩できる場所を探した。きっとだいぶ疲れていたのだろう、私はすぐに眠りに落ちた。目を覚ますと、おじいさんがいなくなっていたことに気が付いた。しばらく待ったが彼が戻ってくることはなかった。
突然、日の光の中で何かが目についた。歩み寄ってみると、私のリュックの横に小さな金属のタグが見えた。それは私の両親が私の犬に最初に与えた銀のネームタグだった。それには「トモ」と書いてあった。
その時だった。背後でなつかしい音が聞こえた。小さな鈴の鳴る音だった。私は振り返った。それが目に入った瞬間に、たくさんの感情が一気に押し寄せた。
頂上でしばらく過ごした後、私は古くからの友人にネームタグを付け、慎重に家路についた。山がくれた贈り物も一緒に。私の魂はとても満ち足りていた。
問1
答:①
筆者が山に戻り続けた理由は
①説明のつかない衝動を感じていたから。
②おじいさんと会うことを計画していたから。
③手品の練習ができると思っていたから。
④その熊について調べたいと思っていたから。
【解説】
第2段落2~3行目の“a feeling that I didn’t quite understand, as if something were pulling me to go back to the mountain”が①と合致する。②、③、④は本文に記述がない。
問2
答:④
筆者の直近の登山で最初に起こったことは次のうちどれか。
①大きく開けた場所に着いた。
②山の頂上まで登った。
③熊が逃げ去るのを見た。
④年配の男性に助けられた。
【解説】
選択肢はどれも登山中に起こったことであり、時系列順に並べると③④①②となる。ただし第6段落の”We came to this very spot and saw a bear.”などから③は直近の登山ではなく数週間前に犬とともに来た際の出来事であることがわかるため除外され、④が正解となる。
問3
答:④
筆者の犬と年配の男性との間でどのような類似性が話題にされたか。
①どちらも職場での怪我を経験したということ。
②どちらも家族ぐるみの親しい友人を最近亡くしたということ。
③どちらも筆者の知人だったということ。
④どちらも市民を守るために働いていたということ。
【解説】
第5段落に、筆者の犬はジャーマン・シェパードで元警察犬であること、おじいさんもドイツ系にルーツを持つ元警察官だということが書かれているため④が正解。
問4
答:②
本文で用いられている下線を施された句rang in the airの意味に最も近いのは次のうちどれか。
①幸福をもたらした
②印象に残った
③大きな音を出した
④不愉快に感じられた
【解説】
下線部のある第8段落を和訳すると「トモは私の犬の名前である。そのことを話していただろうか?おじいさんの言葉がrang in the air。」となるので、意味が通るのは②である。
問5
答:②
直近の登山の体験の中で、筆者の感情はどのように変化したか。
①憂鬱な気持ちからより悲しい気持ちになった。
②決意した気持ちから安心した気持ちになった。
③希望にあふれた気持ちから故郷が恋しい気持ちになった。
④絶望的な気持ちから愉快な気持ちになった。
【解説】
まず、変化した後の気持ちは最終文の”My soul felt very much complete.”にある通りプラスイメージなので、マイナスイメージの①と③は除外できる。残りは②と④だが、設問が問うているのは”over the course of the last hiking experience”「直近の登山の体験の中で」ということなので、この登山を始めた時の筆者の感情を示す部分を探すと、第3段落2行目に筆者のセリフが出てくる。特に”I’ll find you!”には強い決意が込められていると読み取れるため②が正しいと判断できる。
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