このページでは、2019年2月12日に実施された早稲田大学(文化構想学部)の英語長文問題の全訳と、重要な箇所を中心とした解説を掲載しています。
実際に試験を受けた人も、まだこれから試験を控えている人も、今後の勉強の良い参考になると思いますので、ぜひご利用ください。
※短文形式の問題(主に語彙・文法知識を問うもの)については掲載予定はありませんが、お問い合わせよりご質問等を頂ければすぐに対応致します。
2019年度早稲田大学(文化構想学部)の和訳
第1問(A)-全訳
※便宜的に段落番号を振っています。
1. |
毎年、成人の5人に1人が精神疾患を経験します。17人に1人は統合失調症や双極性障害などの深刻な精神疾患を患っています。精神疾患は、人の思考、感情、気分に影響を与える病気です。これについてはいまだに解明されていないところが多くあります。遺伝的なものであり、遺伝子の中で両親から子供へと受け継がれていると考える科学者もいれば、体内の化学的不均衡によって引き起こされると考える科学者もいます。そのたに考えられる要因としては、その人の生活環境や、脳に損傷がある可能性などがあります。精神疾患は何か1つの出来事から来る結果ではありません。研究によれば、相互に関連する複数の原因、たとえば遺伝的特徴や環境、生活様式などが精神疾患を発症しうるか否かに影響することを示唆しています。ストレスの多い仕事や家庭生活によって発症しやすくなる人もいます。思春期における通常の行動変化だと考えられているものも、精神疾患の症状である可能性があります。 英文解釈・解説 (1)は易しい。such as A or B「AやBなど(のような)」なのでorが正解。 (2)は文脈判断。後に続く文が、Some scientists think… Others think… というように精神疾患の原因について諸説あることを示しているので、remain a mystery「謎のまま」とするのが正解。 (3)はやや高度な語彙問題。直後に「親から子へ遺伝子が受け継がれる」とあるのでhereditary「遺伝的な」が正解。 (4)もやや高度な語彙問題。「ストレスの多い職場や家庭生活によって(4)なる人もいる」より、susceptible「(病気などに)かかりやすい」が正解。 (5)は因果関係の問題。本文では「思春期における行動の変化は精神疾患の(5)だ」とあるが、このとき勘違いしてはいけないのは、『行動変化』というのは精神疾患の『原因』ではなく『結果』であるということ。要するに、精神疾患(原因)があるから行動が変化する(結果)のであって、行動が変化するから精神疾患になるわけではない。 よって、原因を表すcauseやreasonではなく、結果の意味に近いsymptom「症状」が正解。 |
2. |
専門家らは、何が精神疾患を引き起こすのか、そしてそれをどのように治療するのかについて、それぞれに異なる見解や考えを持っています。精神障害者を病院に収容するか、あるいは歴史的に行われてきたように刑務所に収容して社会から隔離するという方法があります。また、精神科医の監督の下で、薬を投与して行動を改善させるという方法もあります。薬物治療を受けている精神障害者は、監視付きの住宅で暮らすか、あるいは自宅で暮らしていることが多いです。さらには、ジークムント・フロイトによって初めて提唱された、治療法として精神分析を用いる方法もあります。これをするために、患者は精神科医のオフィスで何時間ものカウンセリングと治療を受けます。早期の取り組みと支援は、結果をより良いものにし、回復の見込みを高めるために不可欠です。直接精神疾患を経験している人に加えて、家族、友人、そして地域社会も影響を受けます。 英文解釈・解説 (6)はやや高度な語彙問題。空所の前後は「ジークムント・フロイトによって初めて」ということから、pioneer「物事を最初に行う(作る、言う)人間となる」が正解。(a)decryは「公然と非難する」などの意。 (7)は易しい。「結果をより良いものにし、(7)の見込みを増やす」ということから、精神疾患からのrecovery「回復」が正解。 |
第1問(A)-解答
1. c 2. c 3. b 4. d 5. c 6. c 7. c
第1問(B)-全訳
※便宜的に段落番号を振っています。
1. |
自由は歴史を通して人類の関心事であるが、その概念化の方法はさまざまに異なってきた。例えば、古代ストア学派の文人らは、市民は、たとえ奴隷として生きていたとしても、彼(一般的に女性は完全な市民とは考えられていなかった)が善良で合理的であれば自由であると主張した。これは、自由を構成するのは、合理的で良いことを意思決定することができる能力から成るという理由からであった。言い換えれば、不合理で悪い欲望に囚われていない、ということであった。 英文解釈・解説 (8)はやや高度な語彙問題。「悪くて不合理な(8)に囚われていない」の部分と対照的に対応する部分”being able to will what is good and reasonable”の中の動詞willには「望む;決定する」といった意味があるため、これと近い意味のdesireが正解。 |
2. |
しかし、古典時代(主にギリシャ・ローマ時代)の文人の中には、これを、現状を正当化するための方便であると見なした。彼らは、自由には少なくとも強制がないことが必要であると主張した。さらに踏み込んで、自由は強制だけでなく依存がないことであると主張する者もいた。ある人が、たとえ実際には好きなことをすることができたとしても、例えば後援者の善意に依存していたならば、彼は真に自由であるわけではない。彼は後援者を支配・管理する力は持っておらず、後援者はいつでも翻意する可能性があった。真の自由は自給自足にあった。それは必ずしも無法状態を伴うわけではなく、むしろ、自己を形成するのに役立つ法に従って生きることであった。これは今日において我々が持つどんなものよりもはるかに真剣かつ直接的な形態の民主主義、すなわち、全自由市民が新しい法制定に直接貢献するという形を要求するものであった。 英文解釈・解説 (9)は文脈判断。前段落の考えを否定する流れで「正当化するための(9)な方法」とあるので、convenient「便利な」が正解。 (10)は易しい。直後の内容が前文の考えをさらに先へ進めたものなので、go further「さらに進む」が正解。 (11)は文脈判断と語彙問題。それまでの文脈から、結局誰かの意思決定下で生きているうちは自由ではないという結論に至ることを推測し、self-sufficient「自給自足の」を知っていれば正解にたどりつく。直後のlawlessness「無法状態」もヒントになりうる。 (12)は難しい。まず文法的に見て、a form of democracyという名詞に対して、後のmuch more intense and (12) than anything we have todayが形容詞的に修飾する後置修飾の形になっているということ。さらに、その後のwith以下はwith OCの形(付帯状況のwith)を取り、実質的にa form of democracyと同格の役割となっていることを見つけなければならない。 そのように見れば、with以下に書かれている内容「全自由市民が直接新しい法制定に貢献する」をa form of democracyの形態であることがわかるので、これを形容する語としてintense「真剣な;熱心な」とimmediate「直接的な」が正解だとわかる。 |
3. |
政治思想の歴史学者クェンティン・スキナーが説得力のある主張をしているように、この自由の「ネオ・ローマ」理論が再び取り上げられたのはルネサンス期で、取り上げたのは、強大な影響力を持つイタリアの思想家・共和主義者のニッコロ・マキャベッリであった。その考えは特にイングランドで普及し、ジョン・ミルトンなどの文人らによって王の振る舞いを批判するために用いられた。しかし、共和主義後の君主制の復権と、自由は依存ではなく単に強制のないことからのみ成ると主張する強大な反対論者のトーマス・ホッブズの政治思想が次第に優勢となり、ネオ・ローマ思想は支持を失った。 英文解釈・解説 (13)は簡単な文脈判断に加えてやや難しい語彙問題。Howeverからの流れなので、これまで支持されてきたNeo-Roman ideasが否定されることは予想がつくはず。しかし、fall out of favor「人気(支持)が落ちる」を知らないと正解するのは難しい。 (14)易しい。(13)と同じく、Howeverからの文脈判断でいけばopponent「反対(論)者」が正解となるのは推測しやすいだろう。 |
(出典:Kathleen Taylor, Brainwashing)
第1問(B)-解答
8. a 9. a 10. b 11. d 12. a 13. b 14. c
第2問(A)-全訳
※便宜的に段落番号を振っています。
1. |
ペンを例に取ろう。状況がどうであれ、どこに置かれていようとも、ペンはペンだ。ペンをペンと決定づける特性は、それがあなたのポケットの中にあるか、手の中にあるか、またはテーブルの上にあるかどうかにかかわらず変わらない。ペンがなぜインクを出すのかを特定するのは簡単だ。背景的状況に関係なく、一定の原因と一定の結果が存在する。 |
2. |
今度は人間を取り上げよう。人間には、それぞれを決定づける明確な特徴、すなわち性格がある。しかし、この性格というものはある程度は一定であるが、状況によって変化することも事実である。就職面接の場にいるときと比較すれば、友人と一緒にいるときの行動は異なる。ある人について理解や予測をする上で、その人が置かれた状況を無視することはできない。核となる性格的特徴と状況的特徴、そして両者間の相互作用について知っておく必要がある。状況を考慮に入れるということは、社会的状況の中で原因を結果に帰属させるプロセスがはるかに困難になるということであるが、これが帰属理論の正体である。そのようにして、我々はある人物の行動が、その人に内在する核となる人格、すなわち性格的特徴なのか(「彼がこっちを見ているのは、私のことが好きだから!」)、または状況的特徴なのか(「ああ、彼がこちらに目を向けているのは、私の後ろに彼の友人がいるからか」)ということを決定する。 |
(出典:Richard J. Crisp, Social Psychology)
設問
15. 筆者は人の性格について何と述べているか?
(a)性格的特性を定義することは非常に変わりやすく、矛盾しやすい。
(b)我々の性格は一定の状況によって変わることもあるが、一部分は極めて固定的である。
(c)性格的特徴は、状況にかかわらず、最も信頼できる行動の指標である。
(d)性格と行動の関係は、ペンの書き方と同じように簡単に理解できる。
16. 著者の見解を最も適切に要約しているのは次のうちどれか?
(a)人間の行動は内的要因と外的要因の両方の産物である。
(b)社会的状況では、人は内在する性格的特徴に従って交流する。
(e)人々の行動や考えは常に状況的特徴によって決定される。
(d)思考や行動は完全に不規則で予測不可能である。
第2問(A)-解答
15. b 16. a
第2問(B)-全訳
アジアの魅力が初めて多くの欧米人の心を捉えたのは18世紀のことで、絹や漆、そして陶器などを初めて中国から持ち帰ったのは、オランダとポルトガルでした。1784年、ニューヨークから広東へ最初に航海した船は、その後一世紀近く続くことになる、大西洋中央部とニューイングランド地方の各州の港との間で中国貿易を始めました。1854年にマシュー・C・ペリーが日本を開国させたことで、その隠された社会について知りたいという渇望が高まりました。ロンドン、パリ、ウィーン、フィラデルフィア、シカゴといった主要都市での国際博覧会には、中国と日本の陶磁器が展示されました。1862年のロンドン万国博覧会には、日本の本や木版画が展示されました。1867年のパリ万国博覧会では、西洋諸国に100点もの日本の木版画がもたらされ、1873年には、日本はウィーンにさらに精巧な展示物を送りました。1876年のフィラデルフィアでの100周年記念博覧会には、2階建ての日本的住居と、アメリカで最初の日本式庭園の1つが含まれていました。パリで開催された1889年の万国博覧会では、日本の茶室の簡素さが、工学的傑作であるあのエッフェル塔と対照をなしていました。1893年のシカゴ万国博覧会では、日本庭園が置かれたある島に、11世紀の平等院鳳凰堂の複製がありました。このうちの一部は今もなお残されています。1904年のセントルイス万国博覧会に出された日本の建築物のうち数点は保存され、フィラデルフィアとニューヨークのモンティチェロに設置されました。
(出典:Peter Johnson and Adriana Proser, eds., A Passion for Asia.)
設問
17. 本文によると、正しいのは次のうちどれか。
(a)日本への関心が高まるにつれて、中国への関心は減少した。
(b)日本が文化の秘匿に努めたにもかかわらず、日本に対する関心は西洋諸国で高まった。
(c)ヨーロッパよりもアメリカのほうが日本文化への関心が高かった。
(d)西洋諸国は日本の建築だけでなく木版画にも魅了された。
18. 1889年のパリ万国博覧会では、日本の茶室は
(a)精巧な木版画の印刷と同じくらい賞賛されたが、エッフェル塔ほどは賞賛されなかった。
(b)エッフェル塔に比べて単純すぎると考えられた。
(c)エッフェル塔の業績と相容れなかった。
(d)エッフェル塔と対をなすものとして見られた。
19. 本文の主旨は何か?
(a)欧米人は中国と日本の芸術と文化を研究したが、理解することはできなかった。
(b)18世紀から20世紀にかけて、欧米における東アジアの芸術と文化についての関心が大きな高まりを見せた。
(c)欧米の大都市は、19世紀に中国と日本の建築を取り入れ始めた。
(d)ポルトガル、オランダ、アメリカから来る貿易業者は、美術館に売ることができる中国と日本の古美術品を探した。
第2問(B)-解答
17. d 18. d 19. b
第2問(C)~第5問-全訳
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