英語版ドラえもん(Doraemon)の特集記事はもう読みましたか?
上の記事で紹介した通り、全18冊もの英語版ドラえもんは楽しく読んでいるだけで英会話力が身に付くこと間違いなしです。
ですが、なんと、センター試験などの大学受験レベルにも十分通用するというところをご紹介します!本気の解説にしっかりついてきてくださいね!
登場人物紹介を英語で読んでみよう
マンガの表紙には毎回ドラえもんの紹介文が英語で書かれていますが、裏表紙にはのび太を始めとする主要キャラクターの紹介文も英語で掲載されています。
※セレクション版は、裏表紙にひみつ道具の紹介文が英語で掲載されています。
この記事では、それぞれのキャラクターの紹介文を引用し、和訳はもちろん、大学受験レベルの解説をつけていこうと思います。
第1弾はもちろん、この人(?)。
Doraemon (ドラえもん)
A cat-shaped robot born on September 3, 2112.
He rode a time machine all the way back from the 22nd century to help Nobita.
He can pull all sorts of secret tools out of the “4-D (Fourth Dimensional) Pocket” on his tummy whenever Nobita needs them to get himself out of trouble.
英文詳細解説
A cat-shaped robot born on September 3, 2112.
【直訳】
2112年9月3日生まれの猫型ロボット。
【解説】(A ~ robotまで)
“cat-shaped”は1つの形容詞。
間の – はハイフン(hyphen)と呼ばれ、複数の単語を結びつけて1つの単語にまとめる役割があります。
shapeは「形」という意味の名詞ですが、まるで動詞みたいに-edがついていますね。
名詞に-edがつくと、「~を持った」という意味が加わります。
似たような形に、次のような表現もあります。
- blue-eyed
「青い目をした」 - white-haired
「白髪の」 - broken-hearted
「絶望した;失恋した」
【解説】(born ~ 2112.まで)
少し難しい話になりますが、born以下は後置修飾という働きになっています。
後置修飾とは、後ろから前の語句を修飾することを言います。
次の2つの文を比較しましょう。
- the song popular among young people
「若者の間で人気の歌」 - The song is popular among young people.
「その歌は若者の間で人気だ。」
上の文が後置修飾です。
どんな「歌」なのかを説明する(=修飾する)部分が、songよりも後ろにありますね。
このような場合、和訳をすると下のように後ろから前へ戻ってくる読み方になりますね。
「歌 ← 若者に人気の」
これが後置修飾の特徴です。
下は”This is a pen.”などと同じ、ごく普通の文です。isが入ったために後置修飾ではなくなりました。
つまり、ドラえもんの紹介文にも、be動詞の有無で次のような違いが生じるというわけです。
- A cat-shaped robot born on ~
「~に生まれた猫型ロボット」 - A cat-shaped robot was born on ~.
「猫型ロボットは~に生まれた。」
もう一つ、前置詞のonにも気を付けましょう。
時間に関する表現をする場合、「~月」を表すのはinを使い、「~曜日には」onを使う、というのが基本中の基本です。
- Japanese students graduate in March.
「日本の学生は3月に卒業する。」 - We go to the park on Sundays.
「私たちは毎週日曜日に公園に行きます。」
今回の文はborn on September 3, 2112「2112年9月3日に生まれた」ということで、月だけでなく日付まで含むため”on”となっているわけです。
3は日付なのでthirdと読みます。
2112はtwo thousand one hundred (and) twelveと読みます(andはアメリカ英語ではふつう省略されます)。
He rode a time machine all the way back from the 22nd century to help Nobita.
【直訳】
彼はのび太を助けるために22世紀からはるばるタイムマシンに乗って戻った。
【解説】
ここは語句・文法の簡単な確認だけで済みます。
ride O back (to ~) (熟語)
「Oに乗って(~に)戻る」
※Oは自転車・バイク・馬、またはバス・電車など。
all the way (副詞句)
「(遠さを強調して)はるばると」
※記念すべきドラえもん第1話のタイトル「未来の国からはるばると」は、All the way from the futureと訳されている。
the 22nd century (名詞句)
「22世紀」
※一種の短縮形で、first=1st、second=2nd、third=3rdと書く。
to help Nobita (不定詞)
「のび太を助けるために」
※副詞的用法。
He can pull all sorts of secret tools out of the “4-D (Fourth Dimensional) Pocket” on his tummy whenever Nobita needs them to get himself out of trouble.
【直訳】
のび太が困難から脱出するのに必要な時はいつでも、彼(ドラえもん)はお腹の四次元ポケットからさまざまな種類の秘密道具を引っ張り出す。
【解説】
長いですが、ここも語句・文法の簡単な確認で大丈夫。
pull A out of B (熟語)
「BからAを引っ張り出す」
※A、Bは名詞。
all sorts of ~ (形容詞句)
「さまざまな種類の~」
secret tool (名詞句)
「ひみつ道具」
4-D Pocket (名詞句)
「四次元ポケット」
tummy (名詞)
「お腹(幼児語)」
同意語:stomach
whenever SV (複合関係副詞)
「SVのときはいつでも」
※「たとえいつSVしようとも」と読むこともできるので、状況に応じて訳し分ける。
need O toV (熟語)
「OにtoVしてもらう必要がある」
※themはsecrets toolsを指す。
get A out of B (熟語)
「AをBから脱出させる」
※A、Bは名詞。
追記:セレクション版で一部文言変更
A cat-shaped robot born on September 3, 2112, who has travelled in a time machine all the way back from the 22nd century to help Nobita.
He can pull all sorts of secret gadgets out of the “4D (Fourth Dimensional) Pocket” on his tummy whenever Nobita needs them to get himself out of trouble.
出典:SHOGAKUKAN ENGLISH COMICS DORAEMON セレクション1
※日本語訳は変更なし。
変更点まとめ
変更されたのは次の3ヵ所です。
変更点その1
~ 2112. He rode a time machine ~
↓
~ 2112, who has travelled in a time machine ~
変更点その2
secret tools
↓
secret gadgets
変更点その3
4-D Pocket
↓
4D Pocket
簡単なものから説明していきます。
4-D / 4D
まず4-Dと4Dは好みのようなものです。
試しにWikipediaで4Dを引いてみると、”4D or 4-D”という記述が最初に出てきます。
※ちなみに2D、3Dにも同様の記述がありました。
どちらでも通用するようですね。
追記:
この記事を推敲中にもう少し調べたところ、日本語版wikipediaに次のような記述がありましたので、引用しておきます。
英語の複合名詞と動詞の中のハイフンの使用は、全体的に着実に減っている。
かつてならハイフンでつながれたであろう複合語は、スペースを間に入れるか1語に統合される傾向にある。
2007年、Shorter Oxford English Dictionaryの第6版は、fig-leaf(現fig leaf)、pot-belly(現pot belly)、pigeon-hole(現pigeonhole)などのように16,000個の項目からハイフンを取り除いた。
インターネットが出現し、コンピュータ技術が普及したことで、新しい普通名詞(”toolbar”、”hyperlink”、”pastebin”など)が生まれたが、これもかつてならハイフンで区切られていたであろう。
出典:ウィキペディア
要するに、最近の傾向として、ハイフンが用いられなくなっているということです。
tool / gadget
次に、「ひみつ道具」を表す英語がsecret tool(s)からsecret gadget(s)に変わっています。
これは辞書の定義を引用して比べてみましょう。
tool
- something that you hold in your hand and use to do a particular job
「手に持ち、ある特定の作業を行うために使うもの」- a piece of equipment or a skill that is useful for doing your job
「職務を行うために役立つ用具・器具または技能」
gadget
- a small, useful, and cleverly-designed machine or tool
「使いやすく設計された、小型で便利な機械または道具」
まず辞書からわかることは、gadgetはtoolの小分類だということです。
toolのほうが意味が広く一般的、gadgetはより具体的なtoolということですね。
たしかに、ひみつ道具はgadgetの説明の方がしっくりくる気がします。
※一部にsmall・useful・cleverly-designedにあてはまらないひみつ道具もありますが、ご愛嬌ということで。
ちなみに英語版ドラえもんの副題は”Gadget Cat from the Future”となっており(下の画像参照)、
上の定義をあてはめて和訳すると、未来から来た、使いやすく設計された小型で便利な機械の猫ということになります。
実はドラえもんもひみつ道具の一つだった?
どうなんでしょう?
さて、最後は重たい話です。
気合を入れて読んでください。
, who has travelled in a time machine
この文については3点解説ポイントがあります。
- rideとtravel
- 関係代名詞の2つの用法
- 過去時制と現在完了時制
では、順に説明していきます。
まずはrideがtravelに変更されている点から。
ride / travel
辞書で定義を比較します。
ride
- to sit on an animal, especially a horse, and make it move along
「主に馬などの動物にまたがり、前に進ませること」- to travel on a bicycle or a motorbike
「自転車やバイクに乗って移動すること」- to travel in a bus, car or other vehicle that you are not driving
「バスや自動車など、自分で運転しない乗り物に乗って移動すること」
travel
- to go from one place to another, or to several places, especially ones that are far away
「ある場所から別のある場所へ、特に遠い場所へ行くこと」
辞書によれば、rideがよく使われるのは自転車や馬のようにまたがって乗るもの、もしくはバスや電車など自分では運転しない乗り物だということです。
これに対し、travelは「長めの距離を移動する」の意味で使われると説明されています。
こう見ると、rideがtravelに変更されたのは、タイムマシンはまたがるものではなく、自分で運転するものなので、上で見たようなrideの定義には合致しません。
言葉は生き物ですから辞書の定義がすべてとは思いませんが、定義に沿わないということがrideからtravelへの変更の背景の一部かもしれませんね。
関係代名詞の2つの用法
コンマ+関係代名詞は継続用法(または非制限用法)と呼ばれる形です。
関係代名詞のみでコンマがない場合は限定用法と呼ばれます。
次の3つの文を比較検討しましょう。
※異なる箇所を赤い太字で示しています。
- I saw Nobita. He was playing baseball.
「私はのび太を見た。彼は野球をやっていた。」 - I saw Nobita, who was playing baseball.
「私はのび太を見た。彼は野球をやっていた。」 - I saw Nobita who was playing baseball.
「私は野球をやっているのび太を見た。」
各文の違いを整理すると次のようになります。
- ピリオド+人称代名詞
- コンマ+関係代名詞(=継続用法)
- 関係代名詞のみ(=限定用法)
1は文が完全に区切られています。これは読みやすく易しい文体のため、初学者向けです。
2は関係代名詞の継続用法で、文を完全に区切らず、流れが続くイメージです。日本語訳を見ても分かるように、意味はほぼ1と同じです。
3は関係代名詞の限定用法(または制限用法)で、日本語訳のとおり後ろから前に戻る後置修飾です。
注意したいのは3. 限定用法です。
関係代名詞の限定用法とは、同じ種類がたくさん存在する場合において、他のものと区別するために使われる用法です。
次の例で確認します。
- a boy who has red hair
「赤い髪の少年」 - a pen (which) I lost yesterday
「私が昨日失くしたペン」
上の文では、単にa boy(少年)やa pen(ペン)だけではどのことを言っているのかわかりませんが、後に関係代名詞を続ける事で具体的になり、他と区別がつきます。
この用法を限定用法と呼ぶわけですが、「限定」とは、文字通り状況や場面を限定するということを意味しています。
少年は少年でも赤い髪の少年、ペンはペンでも私が昨日失くしたペンというような感じです。
ここでもう一度先ほどの3の文を見ます。
3. I saw Nobita who was playing baseball.
太字の部分は後置修飾になるので後ろから「野球をやっているのび太」と読みます。日本語では違和感はないと思いますが、英語ではどうでしょうか?
そうです、英語の場合他との区別という感覚がありますから、まるでのび太が何人もいて、「野球をやっているのび太」の他に、たとえば「昼寝をしているのび太」や「マンガを読んでいるのび太」がいるような気がしてしまうのです。
※昼寝をしているのび太:Nobita who is taking a nap
※マンガを読んでいるのび太:Nobita who is reading a comic book
だから、ドラえもんの道具でのび太が2人3人に増えでもしない限り、この文に限定用法を用いることはないのです。
その点、関係代名詞の継続用法は、コンマが実質的にピリオドで区切るのと同じような働きをしており、ただの補足説明として使うことができます。
なお、継続用法が用いられた文では、whoは指している人物に合わせてhe, she, theyのいずれかに置き換えて読むといいでしょう。同様に、whichはitかtheyと置き換えられます。
関係代名詞の2つの用法については以上です。
過去時制と現在完了時制
最後は時制です。
もう一度変更前と後の文を比較します。
※動詞そのものの違いはここでは触れません。
He rode a time machine ~.
who has travelled in a time machine ~.
上は過去時制、下は現在完了時制の文です。
なぜ時制が変更されたのでしょうか。
先に答えを言うと、ドラえもんは現在、未来ではなく現代で暮らしているからです。
どういうことでしょうか。
次の文を比較しましょう。
Did you find your smartphone?
「スマホ見つかった?」
- ―Yes, I found it, but I lost it again this morning.
「うん、見つかった。だけど今朝また失くしちゃった。」 - ―Yes, I’ve found it. It’s here.
「うん、見つかった。ここにあるよ。」
1は過去時制、2は現在完了時制ですね。
日本語は同じ「~した」となっていますが、英語では時制が異なります。
この2種類の「~した」の区別はどこでつけるのでしょうか?
( )内に注目して下の文を見てください。
- Yes, I found it.
「うん、見つかった。(でも見つかったのは過去のことであって、今も手元にあるとは言ってない。)」 - Yes, I’ve found it.
「うん、見つかった。(見つけたこと自体は過去のことだけど、今もちゃんと手元にある。)」
( )内は、その時制を使った人の心の声だと思ってください。
これが2種類の「~した」の正体であり、過去時制と現在完了時制の違いです。
まとめると次のようになります。
過去形:
過去のある時点での行動・状態を示す。現在と直接の関係はない。
現在完了:
過去のある時点になされた行為の結果や状態が現在に至ってもなお続いている。
ではさっそくドラえもんの紹介文にあてはめてみましょう。
- He rode a time machine back from ~.
「彼は~からタイムマシンに乗って戻った。(でも戻ったのは過去のことであって、今も現代にいるとは言ってない)」 - who has travelled in a time machine back from ~.
「彼は~からタイムマシンで戻った。(戻ったこと自体は過去のことだけど、今もそのまま現代にいる)」
先に書いた通り、ドラえもんは今、未来ではなく現代ののび太君の部屋で暮らしていますよね。
ということは、ドラえもんはタイムマシンに乗ってやってきて、そのままそこにいるということになりますから、まさに現在完了形の表す隠れた意味にぴったり一致することがわかりますね。
過去形だと、単にタイムマシンに乗ったということだけで、今どこにいるかまでは知らない、という感じに見えてしまうんですね。
ただし、ネイティヴ的にはそこまで気にしない人の方が多いようです。
ここまで説明してきた違いは「厳密に言えば違う」という感じで、あまり気にし過ぎると「この人ちょっと細かいな~」と思われるかもしれません。
でも、言語学習はそのくらいでちょうどいいんです。
わかっているけど気にしない、というネイティヴと、まったくわからない非ネイティヴのレベルにはとてつもない差がありますから、最初のうちは細かすぎるくらい勉強して、だんだんといい加減さを身に付けていくのが正しい道のりだと私は思います。
まとめと復習
ドラえもんの紹介分だけでこんなに長く書くとは私自身思ってもいませんでした。
内容を簡潔に整理しましたので、復習にお役立てください。
説明を思い出しながらクリックしましょう。
単語・熟語
文法事項
これらはすべて大学受験や英検準2級以上で問われやすい知識です。ぜひ、繰り返し英文度説明を読んで理解し、定着させましょう。
今回の記事は以上です。
次回に続きます↓
英語版ドラえもん特集記事はこちら↓
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